最高裁判所第三小法廷 昭和53年(行ツ)119号 判決
福岡県嘉穂郡桂川町大字土居一三六番地
上告人
靏清一
右訴訟代理人弁護士
久保良市
福岡県飯塚市新立岩一一番四五号
被上告人
飯塚税務署長 本松正義
右指定代理人
吉田宗弘
右当事者間の福岡高等裁判所昭和五三年(行コ)第五号所得税更正決定取消請求事件について、同裁判所が昭和五三年六月二九日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次の通り判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人久保良市の上告理由について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 高辻正己 裁判官 江里口清雄 裁判官 環昌一 裁判官 横井大三)
(昭和五三年(行ツ)第一一九号 上告人 靏清一)
上告代理人久保良市の上告理由
原審判決は、以下述べるとおりの判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違背があり、破棄されるべきである。
一、原判決は、租税特別措置法三一条一項、三二条一項にいう「取得の日」とは所有権を取得した日であると解し、また所得税法基本通達三三-九、三六-一二にいう「契約の効力発生の日」も所有権移転の効力が発生した日であると解して、本件の譲渡がいわゆる短期譲渡に該当すると認定している。
二、しかしながら、基本通達にいう「契約の効力発生の日」とは文字どおり契約の効力が生じた日を指すものと解すべきである。
一般に不動産売買契約においては、契約の成立と同時に買主に代金支払義務、売主に所有権移転義務・引渡義務・移転登記義務が生じ、これらの各義務が生じたときに契約の効力が発生したというのである。
このことは本件のように第三者所有の物件の売買においても異なるところはない。
原判決のように、「契約の効力発生の日」を所有権移転の効力発生の日と解するとすれば、それは契約の履行の点まで要求することとなり、契約の効力発生という概念をはるかに超えるものとなるのである。
三、以上のとおり、原判決には租税特別措置法、所得税基本通達に関する法令の解釈に誤りがあり、これが判決に影響を及ぼすことが明らかであるのでその破棄を求める。 以上